研究概要 |
本研究は腫瘍や炎症で増大するガス分子である一酸化窒素や一酸化炭素を顕微ラマン分光を利用して検出し,画像化する新しい技術開発を行うことを目的とした.本年度は主に(1)近赤外パルスレーザを用いてラマン散乱を高感度に測定する実験系を確立すること,および(2)ガス分子を誘発するための低酸素チャンバーの作製,以上二点に集中して実験を進めた.まず基礎光学系の設計とラマン散乱計測に関しては生体透過性を考慮して波長1064nmのNd:YAGパルスレーザを利用し,高速にラマン散乱スペクトルを解析する光学系を確立した.標準試料として4-Dimethylamino-4'-Nitroazobenzeneを用いて強いラマン散乱シグナルを取得することに成功した.しかし,試料によっては微弱なラマン散乱に対して強い蛍光が観察されたため,蛍光にラマンシグナルが埋没してSINが低下する現象が見られた,この対策としては取得したラマン散乱シグナルから蛍光成分を除去する,或いは光学系において時間ゲートをかけ,ラマン散乱に対して遅延して発する蛍光を時間的に除去する,などの対策が考えられた.一方,培養細胞の準備については細胞動態を可視化するために腫瘍細胞(Lewis Lung Carcinoma)に蛍光タンパク質を導入し,また細胞を低酸素刺激するために培養装置を独自に作製した,小型培養器はヒータで一定温度に保ちつつ,外部からPCで電磁弁を制御して培養器内の酸素分圧を15mmHgに保つように設計した.今後は低酸素刺激によるHO-1やiNOSの発現を定量する一方,ガス分子動態をラマン計測から明らかにする.
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