研究概要 |
本研究課題では、蛍光増強免疫測定法を用いた非分離血中抗体測定法の開発を目的とする。平成22年度では、血中測定を可能にする測定系の開発を目指し、懸濁溶液中の抗体濃度が測定できるよう、片面反射型の蛍光強度測定可能な装置系を構築した。測定用基板に、蛍光試薬としてフルオレセインイソチオシアネート(FITC)を修飾したプロテインA(FITC標識プロテインA)を固定化した。このFITC標識プロテインAの固定化したガラス基板の片面が測定溶液に接するようにした蛍光測定用セルを作製した。このセルに試料溶液として抗体(免疫グロブリンG,IgG)を添加したときの抗体濃度と蛍光強度の関係について検討した。その結果、緩衝溶液系において試料溶液中のIgG濃度とFITC標識プロテインAの蛍光強度の増加率の間に相関性が得られた。また、自動化および連続測定を可能とするため、既存の装置系をもとにフローセルを試作し、抗体濃度変化と蛍光強度の応答および解離溶液を用いた再利用について検討した。その結果、セル内抗体濃度に依存した蛍光強度の増加を得た。またリン酸緩衝溶液(PBS)-塩酸(HCl)、およびグリシン-HClの酸溶液にて抗体とプロテインAの解離、およびその後の再結合が確認された。これらの結果から、平成22年度において血液などの懸濁溶液での測定を可能とする実験系の構築を達成した。また、FITC-プロテインAを固定化した本測定系においてIgG濃度の繰り返し測定が可能であることが示された。これらの成果を発展、組み合わせることで、全血中抗体濃度の非分離繰り返し測定が期待される。
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