脂肪組織は、脂肪細胞だけでなく幹細胞、内皮細胞、平滑筋細胞などが存在することから、細胞移植療法のための有用な細胞供給源といわれている。しかし、脂肪組織由来の細胞を移植した後の組織再生における作用機序について不明な点も多い。効果的な細胞移植療法を行うためには、細胞が誘発する組織再生におけるメカニズムについて解明することが重要である。そこで、マウスを用いた基礎的検討、特に血管新生について解明を行う。 まず、C57BL/6マウス鼠蹊部の脂肪組織をコラゲナーゼ処理により細胞を分離した。得られた細胞群を2継代し、flow cytometryにより検討したところ93%以上がCD29及びSca1陽性の接着細胞であった。血管新生増殖因子であるvascular endothelial growth factor、fibroblast growth factor-2及びhepatocyte growth factorの分泌能を調べたところ、プライマリーの細胞群よりも2継代させた脂肪組織由来間質細胞の方が、有意に分泌能が高く、管腔形成能も高いことが分かった。さらに、上清にはケモカインも含有していたことから、その上清に対する白血球遊走能について検討したところ、顆粒球及び単球に対して高い遊走能力があることが分かった。一方、イメージング装置により血管内の観察が可能か否か検討したところ、循環する蛍光標識させた細胞の様子を観察することができた。 今後は、イメージング装置を用いて移植後の細胞の挙動を追跡し、血管新生のメカニズムを調べる予定である。
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