非侵襲的な画像診断方法である磁気共鳴画像(MRI)ではあるが、より明瞭な画像を得るために高投与量のMRI造影剤が必要とされる。本研究は、低投与量でより明瞭なMR画像を得るため、新しい画像取得方法である化学交換飽和移動(CEST)法用造影剤を開発することを目的とした。生体内に多く含まれる水分子をバックグラウンドとして化学交換させることで、観察したい領域のみが強調される画像が得られる。 このCEST法を高分子合成と自己集合的ナノ粒子形成法によって水分子の交換速度を制御し、ターゲットとなる病変部位のみでバックグラウンドシグナルがなく造影剤存在部位のみが描出され、高いS/N比を有する新規な高感度MRI造影剤(CEST造影剤)の開発を行うことを目的としている。 平成23年度の研究はCEST用高分子の作製、及びNMRによる交換速度の評価であった。 本年度は前年度より引き続いて水分子の交換速度を制御することに重点を置き研究をすすめた。CEST造影剤であるEuDOTA(Gly(OEt))4を合成し、高分子として適切な交換速度を有するキレート化合物を高分子へ結合を行うべく、1置換を高分子結合用にしたDOTA(Gly(OEt)3(CH2CO2H))を合成し、カップリング反応によりPEG-b-P(Lys)側鎖のアミノ基へ結合させ、Eu(III)を配位させた。カップリング反応により結合されたキレート化合物の運動性が非常に落ちていることがNMR測定から明らかとなった。これはキレート化合物とポリリシン鎖との間に強固な相互作用が原因であると考えられる。高分子の分子運動の緩慢性と残存するアミノ基による影響でキレート中のEu(III)と水分子の交換反応が速くなった。このことより分子運動の制御を行うことで交換速度を最適にできる可能性が示唆された。
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