食品中ナノマテリアルの安全性が世界的に危惧され始めていることから、本研究では、食品中ナノマテリアルの物理化学的性状(粒子径・形状・表面電荷等)に起因した胎児・幼若マウスにおける体内吸収性/体内動態と生体影響の連関、ならびに生体に影響を及ぼすのであればその発現機構を明らかにし、最終的にこれらの情報を基盤として安全なナノマテリアルが具備すべき条件の抽出と安全性を予測する方法の開発を試みるものであり、国民の健康確保、安心と安全の保障の観点で、極めて社会的ニーズの高い取り組みである。本観点から代表的な食品ナノマテリアルである非晶質ナノシリカを経口・経鼻曝露した際の生体影響を幼若マウスを用いて評価した。その結果、ナノシリカを経口曝露した幼若マウスでは、一過性の体重減少が認められた。また、ナノシリカを経鼻曝露したマウスでは、血液凝固系が活性化する傾向が認められた。これらの減少は、300nm以上のナノシリカを投与したマウスでは認められなかった。以上の事実は、直径100nm以下のナノシリカがサブミクロンサイズの従来素材とは異なる生体影響を誘発する可能性を裏付けている。今後は、脳神経系や免疫系などに対する影響を中心に、より詳細な安全性評価を推進する予定である。将来的には、これらの情報を活用することで、食品中ナノマテリアルの胎児・乳幼児に対する安全性を最大限に確保しつつ、ナノマテリアルの社会受容の促進やナノ食品の開発支援を実現するものと期待される。
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