外部刺激に応答してその形状を大きく変化させる刺激応答性ハイドロゲルはソフトアクチュエータとして幅広い分野で利用可能である。例えば、医療現場で人工臓器の部品や治療器具の稼動部など、ハイドロゲルを用いたアクチュエータが開発されれば、従来の金属製のパーツから人体と類似の物性を持つハイドロゲルへと置き換えることが可能である。しかし、より複雑な形状変化や応答の要求に応えるためには、ゲルとゲルを接着する必要があるが、ゲルのようなソフトマテリアルの接着技術は、ほとんど無いのが現状である。そこで、ソフトアクチュエータの実用化のためには、ゲルとゲルの接着手法の開発がきわめて重要である。申請者らは、電気泳動法を用いる新規ハイドロゲル接着手法を考案し、前年度までにカチオン性ゲルとアニオン性ゲルが電場印加によって接着することを見出している。一方で、ハイドロゲルの接着においては、接着のみならず剥離できることも必要となる。電場印加によって接着したゲルは、逆電場印加によって剥離し、接着強度を維持したままハイドロゲルの接着・剥離が繰り返し行えることがわかった。逆に、ゲルの接着界面の安定化についても検討を重ね、接着ゲルを一度収縮させ再膨潤させるだけで剥離しなくなることがわかった。このことにより温度応答性高分子ゲルと非応答性ゲルの多層接着が実現可能となり、温度変化によって一軸運動を示すハイドロゲルアクチュエータの作製に成功した。また、カチオン性とアニオン性の高分子ゲルであれば、その種類を問わず、生分解性高分子ゲルを用いても電場印加によりハイドロゲルは接着した。その接着強度は、電場印加時間や印加電圧、高分子電解質の電荷量で制御できることがわかった。
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