研究課題
本研究の目的は、センダイウイルス(SeV)ベクター(細胞質に存在し、染色体に組込まれず、遺伝的組換えも起こさない)を用いて誘導したiPS細胞に、通常のSeVベクターおよび時限型SeVベクター(細胞質から除去可能で、一過的発現を果たす一連のベクター)を用いて神経細胞の分化誘導を行い、原細胞と遺伝的背景が一致する分化細胞を効率良く得ることである。今年度は開発中の新型ベクターを用いてマウスiPS細胞およびヒトiPS細胞の誘導を行い、それぞれiPS細胞が誘導されること、およびそれらiPS細胞よりSeVベクターが数日で消失することを確認した。マウス細胞への適用報告の少ないSeVベクターのシステムでも、本研究でC57BL/6Nマウス線維芽細胞から容易にipS様細胞を誘導することに成功していたが、今回LIF依存的に無フィーダー培養が可能なこと、C57BL/6Nマウスに移植してテラトーマを形成することを確認した。さらに前年度に選定された神経細胞分化誘導に関わる転写因子をSeVベクターに搭載、上記のように得たiPS細胞に導入して神経細胞への分化誘導を試みた。その結果、転写因子を導入したiPS細胞から、非導入のiPS細胞に比べ、ドーパミン産生神経細胞が高い誘導効率で得られることを確認した。次に、分化誘導では複数の転写因子と連続的に遺伝子導入する必要があるが、今回、中期発現タイプ時限型発現SeVベクターに蛍光タンパクBFPまたはGFPを発現するベクターの連続的感染の検討を行った結果、一次感染ベクター消失後に二次感染が可能であることを確認した。このようにSeVベクターが本研究の目的達成手段として相応しいものであることが確認された。現在、より機動的かつ短時間の発現制御が可能な実用的な時限型ベクターの開発を進めている。
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