研究概要 |
本年度は、実際にYamamarin誘導体の一つであるC16-Yamamarinの猫の腎細胞に対する細胞増殖抑制活性の有無とその可逆性、Wisconsin of University solution(以下UW液)とリン酸緩衝ショ糖液(Phosphate buffred sucrose、以下PBS)にC16-Yamamarinを添加することによりC16-Yamamarinの細胞保護効果、さらに再還流モデルにおける細胞増殖率について検討した。Feline kidney distal tubular cells(以下FKD細胞)を1.0×10^4cells/mlで接種し、24時間、37℃、5%CO_2の存在下で前培養した。前培養後、培地をコントロール培地とC16-Yamamarin添加培地に換え24,48時間培養後WST-8アッセイにて生細胞数を測定した。48時間培養後、コントロール培地群とC16-Yamamarin添加培地群の培地を通常培地に換え24時間培養しWST-8アッセイにて生細胞数を測定した。FKD細胞を37℃、5%CO_2の存在下で24-25時間、コンフルエント状態になるまで培養した。そして37℃に加温したリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄後、UW液、PBS、C16-Yamamarinを25μMになるよう添加したUW液、PBSに浸し4℃で冷保存した。そして、保存開始から3,6,9,12,15,24時間後にLDH活性とWST-8アッセイにより生細胞数を測定した。上記の方法で12時間冷保存したFKD細胞を、通常の培地に戻し37℃、5%CO_2の存在下で再培養した。そして、再培養開始から24,48,72時間後にWST-8アッセイにより生細胞数を測定した。FKD細胞に対しても、C16-Yamamarinの細胞増殖抑制活性が認められ、それは可逆的であることが示唆された。FKD細胞をC16-Yamamarin添加臓器保存液で保存すると、LDH活性が上昇し、生細胞数が減少しているように見える結果がみられた。しかし、この結果は、細胞が休眠状態にあるためWST-8が還元されにくくなってしまったためであり、生細胞数が減少したわけではないのではないかと考えられた。12時間冷保存後の再灌流モデルでは、C16-Yamamarin添加臓器保存液で冷保存した群で、24-48時間の細胞増殖率がコントロール群を上回る傾向がみられた。その後の48-72時間の細胞増殖率で2つの群に差はほとんどみられなかった。これらは、C16-Yamamarinの臓器保存液への応用の可能性を探る第一歩であり、次年度さらなる検討が必要であると考えられた。
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