研究概要 |
昨年度はN末端部にパルミチン酸を加えたYamamarin誘導体の一つであるC16-Yamamarin を用いて実験を行なったが、本年度は他のYamamarin誘導体より最も低濃度で増殖制御作用が確認されているC16-NIPRL-NH2を用いた。本研究ではWisconsin of University solution(以下UW液)にC16- NIPRL-NH2を異なる濃度で添加することによりC16-NIPRL-NH2の猫腎細胞に対する細胞保護効果について検討した。Feline kidney distal tubular cells(以下FKD細胞)を1.0×104cells/mlで接種し、24時間、37℃、5%CO2の存在下でコンフルエント状態になるまで前培養した。そして37℃に加温したリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄した後、UW液単独、そしてC16- NIPRL-NH2を2.5μMあるいは5.0μMの異なる濃度になるよう添加したUW液に浸し4℃で冷保存を開始した。そして、保存開始から3, 6, 9, 12, 15, 24時間後にMTTアッセイの変法であるWST-8アッセイにより生細胞数を測定することで、細胞の細胞増殖抑制活性を経時的に評価した。今回の研究ではC16- NIPRL-NH2はUW液に添加した場合、FKD細胞に対しては有意な細胞増殖抑制活性は認められず、またC16- NIPRL-NH2の濃度依存性は確認されなかったが、24時間後では細胞増殖抑制活性がUW液単独群を上回る傾向がみられた。Yamamarinの臓器保存液への応用に関しては、Yamamarinの細胞浸透性、細胞毒性、適切な誘導体の選択など今度更なる検討が望まれる。
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