研究課題
超音波診断装置および超音波顕微鏡用いてを取得される超音波エコー信号から、脂肪および線維のそれぞれを弁別する信号解析法について複数のアプローチから検討を行った。主な検討内容は「脂肪の音響的性質がエコー信号に与える影響」である。研究室で立ち上げた既存の生体音響特性計測システムを用いて複数の肝臓試料の音響特性を計測した。このとき、脂肪化した肝臓試料には、脂肪沈着度の異なる複数のSPF病変ラットの肝臓を用いた。また、線維化による影響について検討するために、薬剤投与により肝硬変を発症したSPF病変ラットの肝臓についても計測を行った。計測時においては、生体音響特性計測システムにおける音波送受信部を数百Hz~数MHzの超音波振動子に切り替えて同一組織を計測することで、様々な周波数帯において脂肪の音響特性を取得している。その結果、正常、脂肪肝、肝硬変のラット感想においてそれぞれ減衰と音速の間の相関関係が認められ、さらに各種の組織性状によって減衰-音速分布が異なることが確認された。さらに、より高分解能での計測を実現するために、上記システムで計測した各種肝臓試料を10μm程度の厚みに薄切し、100MHzを超える超音波を用いて計測を行う超音波顕微鏡システムを構築した。並行して、超音波診断装置で収集した脂肪肝および脂肪性肝炎の臨床データについて、統計的手法を用いたエコー信号解析を実施し、脂肪沈着度とエコー信号変化との相関性についての検討を行った。これらの成果を複合することにより、脂肪の音響的特性を考慮した超音波による組織性状の定量診断法が確立できると考える。
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Medical Imaging Technology
巻: Vol.28、No.3 ページ: 163-168