研究課題
昨年度から引き続き、ナノ秒パルス(nsPEF)の刺激がHeLaS3細胞の細胞膜にセラミドを惹起させ、apoptosisを誘起させるシグナル経路を研究した。nsPEF刺激は小胞体とミトコンドリア両方に影響しており、小胞体ではIRE1/Cas4/Cas3とASKI/SAPK/c-Junの経路を活性化させ、ミトコンドリアでは、Baxの上昇とSAPK(JNK)のリン酸化がMcl-1を減少させ、ミトコンドリア膜の崩壊を促進した。時間軸上では、やや小胞体ストレス経路の方が先行して進むことがわかった。本研究で使用した120nsパルスは膜上のものへ刺激を伝えやすい特性があるので、小胞体膜へは電界の直接刺激もあったと考えられる。阻害剤(EDTA/EGTA)でセラミドの発現を止めても、c-Junのリン酸化が全て止まらなかったことは上記の原因の結果だと推測される。また、nsPEFにおいて生存因子も複数上がっており、ICADの増加も確認された。そのため、Caspase3が活性化してもしばらくDNA断片化が始まらないという現象が起きるということがわかった。また、セラミドは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の受容体を抑制することが知られているので、がん治療としてnsPEFを使用した時に再発の予防やがん幹細胞への長期的なストレスなどの2次効果があると考えられる。一方、バースト正弦波高電界(Intense Burst Sinusoidal Electric Field : IBSEF)により、特定周波数により細胞へ死なない程度の弱い刺激を加えた場合、ホルミシス効果により増殖を引き起こすことが示唆された。3-10MHzの領域の電界により、刺激が弱いときはミトコンドリアの活性化が起き、それよりもやや強い時には小胞体のシャペロンやHSP関連因子の活性化が起きる事が示唆された。これらの結果、適切にIBSEFを用いて、ミトコンドリアの活性化を促せば、アンチエイジング・肉体強化・痩身医療などの分野での応用が期待できる。また、電磁環境への影響(特に発生初期の胎児)を考える上で、実験で用いた周波数帯での胎児期への影響を調べる必要があるかもしれない。
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