研究概要 |
当初の案では,血液を正電荷領域と負電荷領域に分離ししかるのちに別の流路において電場を印加し加速することにしていたが,検討の結果,広範囲にわたり連続的に分布する正電荷あるいは負電荷に対し一定強度の電場を印加することは困難との結論に至り,同一流路内において正電荷領域と負電荷領域を流路に沿って交互に分布させ,しかるのちに直線型粒子加速器と同様の原理で各領域に対し個別の電場を印加する方式を採用することとした. まず,外部電極への印加電圧と流路内に生じる電場の基本的な関係を知るため,アクリル製流路および銅板電極からなる電場印加装置を試作し,内部の電場を簡易的に計測した.結果として流路内電位が血液内電荷の加速に必要であろうと想定していたオーダーの大きさに達しなかったため,単純な金属電極でなく,同じ印加電圧に対し流路内に強電場を作り出すべく電極から流路に至るまでの物質を誘電率に注目しながら再検討する必要が明らかとなった. そこで,加速装置を円筒状流路と流路を取り囲む円環電極と考え,電極周辺部,流路管,流路内部の3層からなるモデルにて簡易的なシミュレーションを行った.その結果,電極印加電圧が一定の場合,電極周辺に強誘電体を配置することにより流路内電場が増すことが示された.具体的には流体である血液よりも誘電率が著しく大きい酸化チタンやチタン酸バリウムを電極と流路管の間の領域に充填するのが効果的と判明した. 現在,酸化チタンを塗布した銅板電極を使用した実証実験と,有限要素法による本格的な流路内電場シミュレーションに取り組んでいる.
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