研究概要 |
本年度は,前年度に検討した基本原理と設計構想をもとに具体的な装置の設計と製作を行った. 電場印加式ポンプにおいて駆出力確保のためには血中の正電荷と負電荷の十分な分離が必要である.正負電荷の分離には強電場の印加が必要であるが,設計にあたり,流路内に電極を多数配置し各電極間に局所的な強磁場領域を作り出すことでこれを実現することとした.ただし,導電性のある電極が露出した状態では血液が電気分解されてしまうため,これを防ぐために表面に誘電体を塗布する必要があり,本研究では,表面を酸化処理したチタン電極を採用した.酸化チタンは強誘電体であり,電極への電圧印加により多くの電荷を集めることができる. 血液の流れを生むためには,各電極に集めた電荷を連続的に一定方向へ移動させる必要がある.本研究では,各電極の極性を一定の周波数で切り替え,また,各電極の電圧変化の位相ずれを調整することで正電荷および負電荷がそれぞれ電極間を縫うように一定方向へ進む仕組みとした. 製作したポンプにおいては,幅15mm,厚さ0.5mmのチタン板の表面を陽極酸化処理してチタン電極としこれを66枚配置した構造となっており,各電極に1/3周期ずつ位相のずれた電圧(三相交流)を印加することで,幅0.5mm,高さ3mm,長さ9mmの流路9本において血液が駆出力を与えられる仕組みとなっている.現在,血中電荷の多くを占めるNaイオンとC1イオンからなる液体すなわち食塩水を用いて適切な電極電圧の印加方式(電圧,周波数)について実験的検討を重ねている.電極被膜層の絶縁破壊を防ぐ必要もあり,印加電圧は数10V~100V程度となる見込みである.NaイオンおよびC1イオンがどの程度移動できたかを評価するためポンプ前後において溶液の塩分濃度を測定する.
|