研究課題/領域番号 |
22700522
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
山口 充孝 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 放射線高度利用施設部, 任期付研究員 (10375404)
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キーワード | 可視化 / 量子ビーム / 放射線 |
研究概要 |
制動輻射をプローブとした粒子線治療における飛程モニタリング手法の確立を目指し、平成23年度は、飛程位置測定手法の実験による検証を行った。粒子線治療で用いられている290MeV/uの炭素ビームを水ファントムに入射し、幅2mm鉛のスリットと5×5×0.5mmのCdTe半導体検出器を用いて、ビーム軸に対して90度方向に放出される制動輻射を測定し、発生量の入射深さに対する依存性(発生曲線)を得た。理論計算によると、飛程位置から上流側2.7mmの位置に、発生曲線の特徴点(傾きが急激に変化する点)が現れることが予測されており、本手法は特徴点から飛程位置を求める。実験では、理論計算とほぼ同じ位置(飛程位置から上流側6mm)に特徴点が観測され、これにより、本手法の実現可能性を示すことができた。溝1本の単純形状スリットを使用したため、測定時間は30分程度と長いが、多数本のスリット構造をもつコリメータと大面積検出器を組み合わせて使用することで、測定時間を数分程度に短縮できることから、現在、シミュレーションスタディによりこの検出系の検討を行っている。また、今回の実験で得られた発生曲線は、特徴点の位置に関しては理論計算とおおむね合致していたものの、曲線の形状は飛程位置から30mmほど上流側の位置において、理論計算との齟齬が生じていたため、理論計算方法の改善にも取り組んだ。これまでの計算では、制動輻射スペクトル形状として準自由電子制動輻射の式を近似的に使用していたが、実際の物理過程により即した二次電子制動輻射の式を用いて計算コードを構築し直した。これにより、実験と理論計算との齟齬が大幅に改善された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手法の実現可能性を実際の実験により示すことができたため、順調に進展していると判断できる。制動輻射の理論予測と実験結果との齟齬改善のため、計算コードの再構築に若干時間を要したが、実験データをより良く説明できるモデルが得られ、結果として、次年度の測定系検討促進に繋がるものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
検証実験では測定条件をシンプルにするため、スリット溝1本のコリメータを使用し、30分ほどの測定時間を必要とした。最終年度にあたる平成24年度は、測定効率の高い測定系の検討、製作を行い、測定時間の短縮を実現することで、リアルタイムモニタリング手法の確立をめざす。
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