1.目的 本研究では、キセノン光線の星状神経節近傍照射により脳活性化効果が得られるか否かについて解明することを目的とした。 2.対象と方法 本研究への参加に同意の得られた健常者23名を対象とし、各対象者に対して(1)安静仰臥位での両側の星状神経節近傍への10分間のキセノン光線照射(Xe-SGI)と、(2)Xe-SGIを伴わない10分間の安静仰臥位保持(コントロール)の2条件を実施順序をランダムとした上で、日を改めて実施した。検討項目としては、Xe-SGIおよびコントロール実施中の心拍変動および上肢皮膚温(自律神経活動動態の指標)と脳波成分(β波、α波、θ波:覚醒度の指標)、Xe-SGIおよびコントロール終了後のTrail making test(TMT)の遂行時間および誤答数(注意集中機能の指標)とした。 3.結果と考察 心拍変動および上肢皮膚温については、Xe-SGIの実施前後でのみ交感神経活動の抑制ならびに副交感神経活動の亢進を示す所見が認められた。脳波成分については、Xe-SGIの実施前後でのみβ波成分の減少とθ波成分の増加傾向が認められた。TMTの遂行時間については、2群間で明らかな違いが認められなかうたものの、TMTの誤答数についてはコントロール終了後と比較してXe-SGI終了後での増加が認められた。以上の結果から、Xe-SGIは自律神経活動動態の変容(交感神経活動の抑制および副交感神経活動の亢進)を引き起こすと同時に、覚醒度や注意集中機能の低下を引き起こす可能性が示唆された。このような観点から、Xe-SGIにより脳活性化効果を得ることは困難ではないかと推察された。しかしながら、今年度は、Xe-SGIに伴う脳循環動態変化に関する検討を行うことができなかったので、次年度の課題として取り組む予定である。
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