本研究の目的は腱板断裂症例の肩関節運動を3次元的に測定し、有症状症例と無症状症例間の運動様式の違いについて詳細に調べることである。本年度は本研究の初年度であり、肩関節運動の3次元解析を可能にする測定システムの構築を第一に行った。この測定システムについては文献検索や学会参加によって適切な手法や運用に関する情報を収集した。測定機器としてPolhemus社の電磁気式三次元動作解析装置3SPACE FASTRACKシステムを購入した。このシステムは4つのセンサーを有し、空間上の上腕骨、肩甲骨、胸郭の位置角度情報を得られることができる。そして、本研究に適した測定・解析ソフトの開発を外部の業者に委託し、共同でソフトを完成させた。このソフトにより前述した3つの剛体間の位置角度情報も測定可能となった。この測定機器とソフトを使用し、健常の研究協力者を被検者として実際の実験環境下で動作確認を行い、測定精度を確認した。これらと並行して、東北大学病院の整形外科医と協議し、腱板断裂患者の診断基準と有症状症例と無症状症例の抽出方法を作成した。現時点では計画通り肩関節を専門とする5名の整形外科医からの協力が得られている。また、被検者抽出から測定までのプロトコールを作成した。このプロトコールを作成後、当学の倫理委員会に本研究の審査を申請し、承認された。倫理委員会承認後は被検者の抽出を開始し、これまでに基準を満たした対象者が4人抽出された。データ測定も開始し、2人の計測が終了している。
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