認知症高齢者が主体的に「やりたい」と思うプログラムを実践する脳活性化リハビリテーションが、意欲を引き出し、活動性を高め、認知症の進行予防に有効であるか科学的に検討することが本研究の目的である。今年度は2つのグループホームの利用者19名を対象として、週2回、1回60分、3ヵ月間、高齢者が体験してきた家事、手仕事、遊びなどをテーマに馴染みの古道具を用い、その使い方をスタッフに指導してもらう作業回想法を無作為比較試験にて実施した。評価は、認知症の重症度(Clinical Dementia Rating ; CDR)、認知機能(長谷川式簡易知能スケール、時計描画、Trail Making Test-A)、行動・心理症状(Multidimensional Observation Scale for Elderly Subject ; MOSES、Dementia Behavior Disturbance Scale)、日常生活の意欲(Vitality Index)、身体活動量(加速度センサー付生活習慣記録器ライフコーダーGS:スズケン社製)を用い、介入前後で比較した。その結果、介入群ではCDR値が11名中4名で改善した。またMOSESの合計点と下位項目の「引きこもり」が統計学的に有意に改善した。身体活動量では活動時間が長くなる傾向を認めた。参加者への満足度アンケートでは11名中9名が満足度しており、4名は生活の楽しみができたとの回答を得た。介入に参加したスタッフへのアンケートからも対象者の発話が増えたり、穏やかになるなど変化を感じ、実際のケアの中でも昔話を活用したり、本人の能力を引き出すケアを心がけるようになったとの回答が得られた。以上より脳活性化リハは、認知症高齢者が楽しく参加でき、かつ行動心理症状を低減し、他者との交流や身体活動時間を増やす可能性が示された。またケアの質の向上にもつながる可能性が示された。
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