研究概要 |
認知症高齢者が主体的に「やりたい」と思うプログラムを実践する脳活性化リハビリテーションが、意欲を引き出し、活動性を高め、認知症の進行予防に有効であるか科学的に検討することが本研究の目的である。今年度は養護老人ホーム入居者37名(平均年齢81.6歳.CDR 0.5:14名,CDR 1:11名,CDR 2:12名)を対象として、MMSE、Quality of life-AD;QOL-AD(主観的QOL)、やる気スコア、Lubben social network scale;LSNの一部(社会的人間関係)を実施し、介護度、生活状況、趣味活動等を聞き取り調査し主観的QOLに影響を与える因子について検討した。重回帰分析の結果、主観的QOLの有意な影響因子は年齢・やる気スコア・LSN(p<0.05)であり、施設入居高齢者の主観的QOLには介護度、認知症の重症度や認知機能よりも、意欲や社会的人間関係が影響することが示された。本結果を元に養護老人ホームの職員16名、利用者32名を対象とし、職員研修と利用者への介入を実施した。研修内容は認知症のケア等に関する内容を4回実施した。利用者に対してはやりたいことを行う自主活動グループを、月2回、6ヵ月間実施した。自主活動グループは脳活性化リハの原則に基づき実施し、16名の利用者が参加し、利用者相互の交流を促した。その結果、全利用者でMMSE、本人のQOL-AD、介護職が評価したQOL-AD、MOSES引きこもりが有意に改善した。自主グループ参加者と非参加者の比較では参加者にのみMMSEの有意な改善を認めた。介護職員に研修を通じて脳活性化リハやケアの知識を得てもらい、かつ利用者が主体的に取り組めるような活動を提供することで、QOLを向上させてたり、認知機能を維持改善できる可能性が示された。
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