研究概要 |
リハビリテーションの臨床現場において、外傷後のギプス固定や慢性疾患による不動を契機とした二次的な廃用性筋萎縮の予防、早期回復が重要であり、その予防、早期回復手段として電気刺激や筋力増強運動、荷重負荷などが行われているが、そのメカニズムは明らかではない。筋萎縮からの回復もしくは筋肥大機構には、様々な因子が関与しているが、その中の一つとして筋衛星細胞の増殖、分化、融合による筋核数の増加が必要とされている。筋衛星細胞は成熟骨格筋において、休止した状態で筋基底膜と筋線維細胞膜の間に存在し、骨格筋の損傷や伸張刺激により筋分化因子を発現し、増殖、分化、融合することで修復、肥大に関与している。また、in vitroの研究において、肝細胞増殖因子(HGF)の刺激により筋衛星細胞が活性化することが示されている。 これまで、一回の電気刺激により筋分化因子およびHGF mRNAが増加することが判明しているが、HGF蛋白質の変化および供給元については不明であった。そこで、今回、一回の電気刺激による足底筋および血中のHGF蛋白質発現量の変化を調査した。坐骨神経刺激によりラット下肢筋に収縮を惹起し、1,3,7日後に足底筋および血液を採取した。その後、ELISA法によりラットHGF蛋白質濃度を定量、比較した。その結果、足底筋および血液中のHGF蛋白質量は有意な変化を示さなかった。つまり、HGFは坐骨神経刺激により腎臓その他の臓器から供給されないこと。また、筋において急激なHGF蛋白質の産生は生じていないことから、筋衛星細胞の活性化にはHGFの活性変化が関与していることが考えられた。
|