研究概要 |
関節軟骨は、生後に成熟する組織のひとつで、出生時には未熟な状態である。膝関節の関節軟骨の成熟過程において、最も関節軟骨への負荷が変化すると考えられる時期が出生前後である。 今年度は、研究の目的における次年度以降の研究の基盤となる基礎データの蓄積を行った.本研究中、最も重要な基礎データとなる関節軟骨の軟骨マトリックスにおける、力学的特性および組織学的特性を明らかにするため、出生を挟む各発生段階について、出生前の妊娠19日目胎仔、出生当日の新生仔、生後10日目の胎仔、17日目の胎仔を用いた.サンプルは各個体から、膝関節大腿骨の関節軟骨を取り出し、力学測定用、組織用にわけ、速やかに測定、または固定を行った.力学的特性の指標として弾性係数を測定した.組織学的特性の指標として、GAGの組織染色法により、その局在等を調べた.コラーゲンtypeI,IIの局在について、免疫組織化学法により調べた.最も変化する時期における関節軟骨の力学特性を示す指標のひとつである弾性係数を測定した.出生前後の比較的短時間(48時間)に、弾性係数が劇的に変化する事が示唆された.また、生後のサンプル間のヤング率については、それほどの著しい変化は見られなかった。これらの軟骨サンプルの個体差は比較的大きいため、統計解析ならびにさらなる検討が必要である。しかし、これまでのデータで出生前後についての力学的な基礎データはなく、今回の結果は、関節軟骨の発生のみならず、加齢による変化の抑制、あるいは軟骨再生へつながる可能性があり、意義のある重要な知見が得られた.
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