関節軟骨の成熟過程と出生により生じる重力負荷が関節軟骨の性質にどのような変化をもたらすのかを知るために、出生前後の胎齢19日目と出生後1日以内のラット大腿骨膝関節軟骨を採取し、様々な角度からその特性を比較した。同時に、リハビリテーション法の開発につなげるためには、まず加齢により関節軟骨がどのような状態になっているかを知る必要があると考え、篤志献体を対象とした膝関節軟骨の状態を剖検し、関節軟骨の状態について調べた。 前年度までに、①関節軟骨の力学的な特性が出生前後で大きく変わる事を示した。②組織学的には、出生前後とも関節軟骨に特徴的な層構造は不明瞭であったが、細胞密度は深部で有意差があった。③免疫組織学的には、劇的な変化は見られなかったが、一様であったコラーゲンの分布にグラディエントがでてきた。④網羅的に出生前後でのタンパク発現比(E19/P0)をとり、比が増減35%以上のタンパクについてその機能別に分類すると、出生前後で非常に特徴的なタンパク発現パターン変化が見られた。 これらの結果を元に、組織変化に比べて、タンパク発現や力学的特性の変化が著しいが、力学的な特性の急激な変化にはこれらのタンパク発現の変化だけでなく、その他の要因が大きいと考えた。先行研究により関節軟骨の中でも大きな構成成分であるコラーゲンやプロテオグリカンの性状が関節軟骨の力学的な性質に大きく影響する事が知られている。経時的な軟骨の性質の変化には糖鎖の長さや硫酸修飾等が関係している事が示唆され、更なる解析を続けている。高齢者の関節軟骨を部位毎の損傷頻度、程度を調べた事で日本人に特徴的な膝関節軟骨の損傷パターンとその広がりについても示唆された。
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