多くの研究が、脳卒中後片麻痺患者に対する筋力トレーニングの重要性を指摘しているが、歩行動作の反復学習のような課題特異的トレーニングによる筋力増強効果については明確ではない。このため、我々は、まず三次元歩行解析を行い、歩行時の最大関節トルクと徒手筋力測定による筋力評価の比較を行ったところ、麻痺側において、股関節伸展、膝関節屈曲、足関節底屈は歩行時の発揮トルクのほうが等尺性最大筋力より大きくなっていた。したがって、これらの筋では漸増負荷抵抗トレーニングより歩行トレーニングのほうが筋に過負荷を与えられる可能性が示唆された。その後、片麻痺者20名をトレーニング群とコントロール群に分けて、歩行動作対する課題指向型トレーニングの効果を調べるために無作為対照試験を行った。その結果、トレーニング群では股関節伸展、膝関節屈曲、足関節底屈筋力がコントロール群と比べて有意に改善するとともに、Timed Up and Goの改善が得られた。以上の結果は最大等尺性収縮よりも歩行時の筋力発揮が大きくなった筋群では課題指向型トレーニングにより筋力改善が得られることを示しており、機能的筋力トレーニングの有効性を示唆するものであると考えられた。
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