研究概要 |
脳血管障害を引き起こす危険因子として高血圧が挙げられる。高血圧のリハビリテーション戦略として運動療法が有効とされているが、高血圧患者において随意運動に伴う循環応答は健常者と比べ過常であることが明らかにされている。その理由として、随意運動における筋収縮に伴い、末梢筋機械受容器反射と筋代謝受容器反射は高血圧において亢進していることが報告されている。一方、中枢運動指令によって引き起こす循環応答は高血圧では増減しているかどうかは明らかではない。本研究は、ヒト本態性高血圧モデルである自然発生高血圧ラット〔spontaneouslyhypertensive rat,SHR}と対照ラット(Wistar-Kyoto rat,WKY}を用いて、中脳歩行誘発野〔mesencephaliclocomotor region,MLR)の電気刺激によって誘発される運動に伴う循環応答について調べた。上丘前縁で除脳したラットはMLRを同定した後、筋弛緩薬(pancuroniumbromide)投与したうえ実験を行った。その結果、高血圧ラットにおいて、MLR刺激(20,30、40,50μA)に伴う昇圧応答はWKYに比べSHRでは有意に高値を示した。また、腎交感神経活動の増加量もWKYに比べSHRでは有意に多かった。さらに、動脈圧受容体除神経(baro-receptor denervation)を行ったWKYとSHR群間の比較においても同様に、昇圧応答と腎臓交感神経活動では有意な差が認められた。以上の結果をまとめると、筋機械受容器反射と筋代謝受容器反射の影響と動脈血圧反射の影響を除外した状態で、MLR刺激によって誘発される運動に伴う循環応答はWKYに比べSHRでは有意に増加した。すなわち、高血圧において中枢運動指令による循環応答が亢進しているが示唆された。
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