研究概要 |
当該年度は,静止立位時の床反力垂直成分(Fz-ACC)を,健常者高齢15名(年齢:74±5歳,身長:157±9cm)を対象として,2枚の床反力計(Kistler社製Type-9287A,サンプリング周波数600Hz)で収集した.全てのデータは,Band pass filter処理(カットオフ周波数1-20Hz)を行なった. 計測項目は,Fz-ACC,関節トルク,身体重心点,足圧中心,下肢関節角度の各項目を分析対象とした.主な解析対象であるDFA法によるスケーリング指数は,0.51±0.05となり健常若年者の0.54±0.09と有意差を認めた(p<0.05).また,老研式活動能力指標を用いて日常生活動作能力とFz-ACCとの相関係数を分析した結果,r=0.85と高い相関となった.この事は,Fz-ACCのDFA値は実生活の運動能力を反映することが示唆されるといえる.前年度に健常高齢者を対象に実施したプロトコールでは有意差を認めなかったが,その際の計測機器は重心動揺計でサンプリング周波数を20Hzで計測しており,データ処理もFFTによるLow pass filter15Hzによる処理であった.Fz-ACCは計測条件によって異なる計測値となるために,今後は安定した計測値を得るための計測条件を検討する必要がある. 本年度は,Fz-ACCの周波数特性についても連続ウェーブレット変換を用いて明らかにした.健常若年者では時間経過にともなう周波数成分は若年者が3~5Hzの帯域に複数のピークが存在した一方,高齢者では6Hz付近のピーク成分のみが観察される特徴が見られた.先行研究より,古典的指標であるCOPの周波数解析では加齢変化を捉えにくいとされる一方で,高周波数帯域が特徴のFz-ACCは新たなバランス評価指標として期待出来る.
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