研究概要 |
スポーツ活動において,筋損傷は最も頻繁に起こる外傷の一つであり,スポーツ関連外傷の約90%は打撲または肉離れといわれている.筋損傷は筋の構造や機能に影響を残すことが多く,特に肉離れは頻回に再発するため大きな問題である、損傷筋の動作、筋力の回復は筋線維の組織学的な再生に先行するため,筋線維の完全な再生を待たずに,スポーツ復帰しているケースが多く,このことが肉離れ再発要因の一つであると考えている.そこで、未損傷の筋線維と回復段階にある未成熟な筋線維に遠心性収縮を起こし,それぞれの外的ストレスに対する耐性を検討している.電気刺激で筋収縮を起こした筋を他動的に伸張し遠心性収縮を5回施したところ,H&E染色画像において著名な損傷は認められなかった.現在、さらに回数など条件を変更してそれぞれの耐性を比較している. また,肉離れ予防には筋線維の回復を促進する必要があると考える.そこで、難治性潰瘍などの治癒を促進させる効果が報告されている人工炭酸泉に注目し,筋線維の回復効果についての検討を行っている.筋を損傷させたラットを人工炭酸泉に漬けることで,損傷後4日後に筋再生過程を調節しているMyogeninタンパクが増加すること,損傷後2週後には再生筋の面積増加と筋核の増加することが認められた。今後もこれらの実験をさらに進め、未成熟筋線維の脆弱性および損傷筋回復促進に関する効果を検証し、肉離れ再発のメカニズムの一端を明らかにするとともに、損傷筋の回復を促進する方法を探求していく。
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