研究概要 |
肉離れはスポーツ活動において最も頻繁に起こる外傷の一つで,その特徴として再発率の高さが挙げられる。筋損傷後のリハビリテーションにおいて,再発率の抑制は大きな課題であるが,なぜ他の損傷と比較して,再発率が高いのかという要因について明らかにされていない。筋損傷を誘発する刺激(挫傷,肉離れなど)に関わらず,損傷筋は同じメカニズムで再生することが明らかにされていることから,再生過程に違いがあるのではなく,損傷自体に何らかの差があると考え,その中でも,肉離れ損傷の場合は縦断的にストレスがかかることから,特に損傷時の膜組織の損傷に焦点を当て実施した。 具体的な方法として,ラットの下腿三頭筋を対象筋として,肉離れ群,打撲群,正常群について,基底膜と筋形質膜の形状について,免疫組織化学的分析を行った。肉離れの誘発は,電気刺激によって筋収縮を起こし,同時に反対方向へ牽引する遠心性収縮モデルを用いて実施した。結果として,正常群と比較して,ラミニンによって染色された基底膜が,肉離れ群において有意に肥厚していることが示されたため,肉離れによって基底膜に何らかの損傷が起こることが明らかにされた。 従来,筋損傷とともに形質膜には完全な破壊が起こるが,基底膜はほぼ損傷せずに残存し,筋再生の足場となると考えられてきているが,本研究の結果によって,肉離れの際に基底膜が損傷し,再生を妨げる可能性が示された。この基底膜の損傷は,肉離れの再発率が高い要因の一つであると考えている。
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