研究課題
慢性心不全はあらゆる心疾患の終末像であり、予後が極めて不良であるばかりでなく、患者のQOLを低下させ医療経済的にも問題となる。本邦でも患者数の急増が見込まれ、その予防と治療の発展は急務であると考えられる。心不全患者において運動療法や行動量の増加による予後や心筋リモデリングの改善効果が示されているが、その機序は十分に解明されているとは言い難い。本研究では、心不全モデルラットを用い、運動療法として一般的に行われる強制的な運動ではなく自発的な行動量の変化を誘発し、それが心不全の病態、特に心室リモデリングに及ぼす影響を検討することを目的とした。Wistar系雄ラットを用い、行動量、心拍数および体温計測用の埋込み型送信機電極を麻酔下にて腹腔内に装着した。送信機埋込み術後は行動量の増加を誘発する環境のケージで飼育した行動群と、通常の飼育ケージで飼育した非行動群とに分けて飼育した。送信機埋込み処置の回復を待って心不全誘発処置を行った。なお、心不全モデルは、心不全の基礎疾患のうち3割を占め、他の基礎疾患より予後が不良である心筋虚血モデルを用いて検討を進めたが、長期間飼育に難渋し十分な計測が行えなかった。そのため、やむをえず心不全誘発処置方法をモノクロタリン投与に変更し、実験を継続した。これは、肺高血圧を惹起することによる右心不全モデルであるが、心筋虚血処置より侵襲が低いと考えて選択した。心不全誘発処置後は再び心拍数、体温とともに行動量を連続モニタリングした。心不全誘発処置後2-4週後に行動群と非行動群の心筋の形態変化を比較したが、行動量と心筋形態変化に関係性は認められず、本研究において、行動量が心不全に及ぼす影響は明らかにならなかった。今後、心不全の誘発方法の変更や観察期間延長などを再検討し、自発的行動量と心不全との関連について検証する必要があると考える。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
International Heart Journal
巻: 54 ページ: 59-63
10.1536/ihj.54.59