研究概要 |
誤嚥性肺炎患者は経口的に栄養摂取が困難なことも多く、適切な栄養状態を保つためにも誤嚥をおこさない食品の選択は不可欠である。今回、我々は嚥下障害者が固形食を誤嚥なく経口摂取可能かどうかを判定するための簡易的なアセスメントツールが考案できないか検討した。 咽頭期嚥下障害患者で嚥下内視鏡の実施が必要と判断された患者50人(意識障害、全身状態・呼吸状態不良者を除外した連続症例)を対象とした。プレテストとして(1)高粘度トロミ水、(2)5分間水に浸したコーンフレーク4gを咳嗽や湿性嗄声、呼吸変化なく3回嚥下可能かどうかをチェックした。その後、固形食として刻み食にトロミ餡をかけた物を用い嚥下内視鏡検査を実施、内視鏡下での誤嚥に対するプレテストの感度・特異度を求めた。嚥下内視鏡検査は5年以上嚥下障害診療に携わる医師がfiberoptic endoscopic evaluation of swallowing(FEES)プロトコルに準じて90度座位で実施、喉頭内視鏡を鼻腔より挿入し誤嚥の有無を鏡視下で確認した。経鼻経管留置者は検査時抜去した。内視鏡は鼻咽喉ファイバースコープ(FNL-10RBS,PENTAX,東京)を使用した。3回嚥下してもらい最も悪かった嚥下状態にて判定を行った。 プレテスト(1)の固形物誤嚥に対する感度88.9%、特異度39.4%であった。またプレテスト(2)の感度82.4%、特異度52.9%であった。固形物誤嚥の検出には形のある物を用いたプレテストのほうが特異度が高く、より物性の近いものを使った嚥下テストでチェックしたほうが適切と考えられたが、固形物は物性の種類は非常にバリエーションに富んでいるため、臨床上の使用に耐えうる簡易検査の作成は困難と思われた。固形物に対しては内視鏡でのチェックが必要と思われた。
|