脳磁図(MEG)は,地磁気の1億分の1という微弱な脳磁界を計測するため,シールドルーム内では,磁界を発生する機器や装置を使用することが不可能であった.しかし,これまでに我々は,シールド加工された刺激装置(プローブ)や電極を使用して,ノイズの混入なく体性感覚誘発磁界(SEF)を計測することに成功してきた.本研究は,温冷覚刺激装置を使用して,温度刺激の違いが,それぞれの温度受容器から,どのような神経線維を伝達して,大脳皮質の機能局在部位に投射されるかMEGを用いて解析ことである. 温冷感覚刺激に関する先行研究は,空間分解能の優れているMRIを使用し,温度変化に対して,大脳皮質の機能局在部位の活動についての報告されたものが多い.しかし,本研究では,空間分解能と時間分解能の優れているMEGを使用して,異なる温冷覚刺激における脳内の情報処理課程の違いについて,SEFの波形(潜時・振幅)から解明しようとする試みである. 今回,温熱刺激を行う装置の開発を行ってきた.温熱刺激装置は,これまでペルチェ素子に電圧を加え,温度刺激を行った報告以外にみられなかった.しかし,ペルチェ素子は,非磁性体ではあるものの,電気信号が加わるとMEGの計測中にノイズを発生してしまい,計測を行うことができない.そこで今回,レーザー光線を使用して,温熱刺激時のノイズ発生をなくし,さらに温熱刺激の立ち上がり速度を電気刺激時の立ち上がりに近似させることができた.しかし,1℃前後の温度変化の設定や一定の温度で刺激を行うことができないため,現在も開発途中である.
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