研究概要 |
複雑局所性疼痛症候群I型,線維筋痛症などに代表される難治性の慢性広範囲痛(CWP)の病態責任の解明は発展途上の段階で,決定的な治療法の開発には至っていない.そこで我々は,CWPの機序解明に基づく新たな理学療法戦略の構築を目指し,ギプス固定後慢性痛chronicpost-cast pain(CPCP)モデルラットを開発した.本研究ではCPCPモデルラットにおけるCWPの中枢要因として脊髄グリア細胞の活性化に,またその末梢要因として固定肢における虚血再灌流障害/酸化ストレスに着目した.CPCPモデルの機械痛覚増強の非固定側への拡大には脊髄ミクログリアの活性化が関与し,その維持には,脊髄アストロサイトの活性化が関与することが示された.ギプス固定肢に生じた虚血再潅流障害/酸化ストレスは,CPCPモデルラットにおける機械痛覚増強の発症ならびに脊髄グリア細胞活性化をトリガーすることが示唆された.今回得られた知見に基づくCPCPモデルのCWPの末梢および中枢機序のさらなる解明は,CWPに対する新たな理学療法の臨床応用に繋がる可能性がある.
|