本年度は、統合失調症入院患者に適切な運動ガイドラインの作成を目的とした。本研究では、無作為化比較対対照試験に準じて統合失調症患者に対する身体運動を介入手段とした縦断的研究を実施した。運動介入は、北欧諸国の精神科領域で実践的に実施されているB-BAT:Basic Body Awareness Therapyを参考にして構成した運動療法を通常の治療(Treatment as Usual)に加えて実施した。B-BATは、身体の中心および中心軸を意識した動きから身体の協調性、バランスなど種々の身体機能を調整および改善する方法として北欧を中心にヨーロッパ各地の精神科領域において広く実施されている運動療法である。運動療法は、協力施設の理学療法士に実施を依頼し、1回30分、1週間に2回の頻度で実施した。生活習慣の変容に対する効果を得るにはさらに長期の検討が必要であると考え、本研究の運動療法による縦断的介入検討の期間は6か月を設定した。また、運動の効果を把握するための評価として(1)身体活動量、(2)睡眠状態を記録し、(3)BARS(身体機能)、(4)PANSS(精神機能)、(5)BI(日常生活活動)、(6)LSI(人生満足度)を3か月ごとに6か月間の評価を実施した。これらの結果から、睡眠の質に関して統計学的な有意差が認められ、身体運動の介入効果が示唆された。本研究は、統合失調症者に対する運動ガイドラインの作成の原案をまとめた。さらに対象を増やした検討を続け、より信頼性のあるガイドラインの作成を目指すことが今後の課題である。
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