研究概要 |
本研究は,ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)による完全麻痺者の運動補助をめざし,ヒト皮質脳波の運動補助への応用を試みるものである.そのため,ヒト皮質脳波の特徴解析に基づく上肢アシスト・電動車イスの制御法の提案,安全を確保した訓練環境となるバーチャルリアリティ訓練システムの構築,脳波計測・解析機能搭載の上肢補助付電動車イスの開発,の3課題を並行して行うものである.今年度の研究成果を下記する.(1)ヒト皮質脳波に基づく運動補助制御:電動車イスは平面移動であることからマウス・カーソル操作と同様の制御方式とみなし,ヒト皮質脳波によるカーソル操作を第一課題とした.今年度は,先行研究であるロボットハンドの動作識別アルゴリズムをカーソル操作の「上」「下」「左」「右」の識別アルゴリズムに適用,実験装置の構築および臨床実験を行った.上肢アシストの制御方式としては,注視する特定の刺激に対する脳波反応のP300に注目し,その基礎実験を行った.すなわち,頭皮脳波を利用し,P300-BMIによる三次元空間に散在する特定オブジェクトの指定が可能であることを示した.(2)バーチャルリアリティ(VR)システムの構築:今年度は,主に訓練環境プラットフォームの構築を行った.三次元動力学エンジン「Open Dynamics Engine」を用いて,三次元シミュレーション上に生活空間・運動補助装置モデルを構築.加速度センサ・ジャイロセンサ・地磁気センサにより構成される姿勢検出装置を開発.その装置を皿操作者に装着して得られる姿勢データを制御入力とするバーチャルリアリティシステムを実現した.(3)上肢補助付電動車イスは,脳波計測からヒトの意図推定,運動補助までの完結したモバイルシステムを目指し,各構成要素の製作を行った.上肢アシスト装置は,基本構成となるセンサ内蔵式ワイヤ駆動モジュールの試作を行った.また制御器として,脳波/筋電信号の計測回路の製作,アナログ回路による生体信号情報処理の検証も行い,電子回路レベルでの生体信号-モータ制御器を開発.
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