本研究では脳卒中リハビリテーション支援のための体幹-肩甲骨系ロボット装具の開発を行っている。着座状態において、上肢リハビリの基本である、到達把持運動を支援するロボットの開発を行っている。日常生活において効果を十分に発揮するための到達把持運動のためには、体幹運動から足底支持まで含めた全身協調運動が行えてこそ、広い到達把持空間が実現できる。 当該年度では、療法士らが行う肩甲骨を把持するための専用のロボットハンドの開発を行った。療法士らは、肩甲骨を把持することで体幹運動そのものを制御しながら、肩甲骨の安定化を図り、同時に広背筋上腕骨側腱の刺激を行なう事で、運動療法の促通を行う。このロボットハンドには、療法士らが広背筋腱を押え、腱を前方移動させる安定化様式を実現しており、2つのサーボモータにより当該運動を実現した。本ロボットシステムを臨床現場において患者に対して装着を行う場合、少なくとも療法士が行う全ての介入手法が実現しなければ、治療行為に該当しないため、本システムの追加により脳卒中患者の運動療法において真に活用可能な構成となった。現在研究協力者のリハビリテーション病院において、患者に対して装着することに関する倫理委員会で許可が得られた。 本ハンドを健常者において実際に適用し、到達把持様式において変化が見られるかについて実験を行った。現状では被験者数が十分ではないが、本研究で提案するロボットハンドを能動的に駆動する場合と、しない場合において、特に体幹回旋運動において到達把持運動時の体幹運動に差異が見られた。当該内容について日本機械学会第25会バイオエンジニアリング講演会にて発表を行った。また、本システムを用い、空間到達把持運動の体幹の使用と足底反力を計測し、ロボットとして実現すべき全身協調運動について、第47回日本理学療法学術大会ならびに第46回日本作業療法学会にて報告した。
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