研究課題
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠時に断続的に呼吸停止を生ずる病気である。脳血管障害や高血圧症、心筋梗塞など循環器系疾患の高いリスク要員とされている。CPAP療法、スプリント療法、外科手術などの治療法が知られているが、CPAP療法、スプリント療法は口や鼻への器具の装着を必要とし、使用時の不快感や衛生管理の煩わしさなどから治療脱落者も多い。また外科的治療は即効性があるものの患者への負担が大きいため敬遠する患者も少なくない。このような現状を踏まえ、本研究では口や鼻への装着物を避け、柔軟なエアバッグ内蔵の装着体を体に付けて眠ることで、極力患者への負担を抑え、快適な気道確保を実現する新しいSAS用治療器具の開発に取組んだ。本研究は2年計画で実施し、1年目においては睡眠時の頭部の位置姿勢変化が気道開通に及ぼす影響を調べるとともに、異常呼吸を検知すると首回りのエアバッグを内蔵した装着体が自動的に膨らんで、気道開通に適した頭部肇勢を実現する治療器具の開発を行った。しかし、頭部をやや捻った状態からの作動において気道開通効果が通常よりも低下するケースが見られた。そこで2年目の研究においては、自由な寝返りを許すと同時に頭部を多少捻った体勢においても確実な気道確保を実現する形態として、頭部に着けるヘッドギヤタイプの治療器具を考案し、開発を進めた。また、異常呼吸を検知する手段の一つとして1年目に開発した鼾検知システムも、さらに高精度な音声解析が可能となるようハードウェアとソフトウェアを作り変え、検出精度を大幅に改善した。さらに健常被験者において、鼻腔内圧の制御と麻酔投与を併用することで擬似的なSAS患者の無呼吸状態を作る手法を用い、ヘッドギヤタイプの治療器具の効果を見る実験を行なった。7名の被験者による実験を通して、開発した器具の気道開通に対する高い効果を確認することが出来た。
すべて 2011
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Anesthesiology
巻: Vol.115,Num.2 ページ: 273-281