これまでに、色覚特性者のための色覚バリアフリーシステムや画像の再配色法がいくつか提案されている。しかし、それらは、撮影した画像を計算機に取り込んで再配色処理を行う必要があることや、最適な画像を生成するための複数パラメータを手動で操作する必要があるなど、限られた状況下でのみ有効な手法であった。また、再配色の過程において、弁別しやすい色の組合せにのみに着目しており、本来の画像が持つ配色情報を考慮しているものはない。 我々は、原画像に対して一般色覚者が感じる色彩の印象を保持した色変換をするために、彩度修正に基づく再配色手法を提案した。さらに、メディアンカット法を用いて原画像の減色化を行い、各色クラスタごとの彩度修正量を計算することによって高速化処理を図った。Lab色空間に基づく減色化(領域分割)と個人の色覚特性モデルを用いることで、色覚特性者別に最適な画像の領域分割を行うことが可能であり、それら領域に対して再配色を行うことにより、見やすい画像を作成することが可能となった。また、処理の高速化を図るとともに、再配色後の画像に対する評価指標を明確に定義したことにより、再配色のためのいくつかのパラメータを効率的に決定することが可能となった。今後、完全自動化に向けて、実験を行う予定である。 一方、各個人の色覚特性に適した色補正を行う前処理として、色覚特性者に労力と負担をかけずにその特性を計測するため、色覚特性モデルの解析(The Farnsworth_Munsell D-15 Test)を汎用計算機・タブレット端末上で簡単に行えるシステムを実装し評価を行った。 全体として、申請時に挙げた研究課題の多くは達成された。しかし、再配色のためのパラメータ自動決定については、現在その有効性を検証するための評価実験を行っている。また、研究発表について、Journal of Signal Processingに本研究課題に関する学術論文を投稿予定(平成24年度中の掲載を目標)であり、さらに平成24年9月に開催される電気学会C部門大会にて発表を予定している。
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