義手の手先具の開閉を行う各々独立した2体系である筋電制御方式とBowdenケーブル方式を融合したハイブリッド方式を提案することで,多機能義手に新たな操作体系と義手ハンドのメカニズムを確立し,より作業性に富んだ義手の可能性を調査する.筋電制御方式とBowdenケーブル方式の義手ハンドの把持力調整能力を調査する実験を行い,精密・力把持機能を有する義手ハンドのメカニズム開発のための仕様を定める.同結果を基に,従来方式と新方式との巧緻性評価試験を行う実験を検討する.義手の筋電・Bowdenケーブルハイブリッド制御が随意的な精密把握と力把握の二機能を共存させうる可能性を調査し,ヒューマン-メカトロニクス・インタフェースと多機能義手ハンドの確立を目指す. 本年度は,ハンドメカニズムの二次試作の改良設計,試作,実験を進めた.使用を想定したワイヤケーブルの弾性試験,ならびに滑り抵抗の試験を実施し,選定作業を進めた.成人男性の手のサイズに合わせるため,ハンド内のワイヤの走行路の改良設計を進めた.また,筋電義手の研究従事する作業療法士やヒューマンインタフェースの研究者,能動・筋電義手の製作経験の豊富な義肢装具士との議論にもとづき,実施した筋電義手と能動義手の把持力調整能力の比較実験を被験者10名にて追認実験を行い,研究論文として投稿する準備を進め,バイオエンジニアリング講演会でその一部を報告した.ソケットは肘の伸展による指の屈曲を行うための肘のインタフェースとメカニズムの設計,一次試作を行った.本研究を進める上で,第5回アジア義肢装具学術大会,バイオメカニズム学会学術講演会に参加し,筋電義手のメカニズム,筋電制御アルゴリズム,作業療法学にもとづいた評価方法に関する研究を進めている関係者と議論し,情報収集と意見交換を行った.
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