研究概要 |
がんの末期に骨転移が起こると,患者の骨は極めて脆弱になり,寝返り動作による体幹の捻れによって激しい痔痛や骨折が発生する.本研究では生体計測技術とロボット技術の知見を活かし,ターミナル・ケアにおけるペインマネジメントを実現する「筋電信号を用いたがん骨転移患者の寝返り支援機器の開発」を行っている.患者の寝返り動作を筋電信号の解析によって検知し,痛みを引き起こす体幹の捻りだけを抑制しつつ寝返り動作を人工筋肉を用いてアシストするもので,この機器の開発により末期がん患者のQOL向上とADL獲得の実現を目指す. 本年度は,寝返り動作の認識および体幹可動域拘束メカニズムの基礎を構築した.まず,寝返り動作時の筋電信号の特徴を加速度信号や力信号の情報と共に解析することで,寝返り時の内腹斜筋の活動タイミング,活動量を定量的に評価した.この成果をもとに寝返り動作の認識に関しては,緩慢な動作の高精度かつ高応答な認識に焦点を当てたミクロ・マクロ・ニューラルネットワークの構造を設計するアルゴリズムを開発し,正確(動作見逃しなし)かつ早期(動作開始の約60ミリ秒前の認識)に寝返り動作を認識できるようにした.また,空気圧ゴム人工筋を体幹に対角線上に配置し,筋電信号により収縮をさせることで,人体との高い親和性を有しながら,体幹回旋運動のみを拘束する機構を開発し,健常者10名により従来の硬性体幹装具と同程度の拘束性能を有していることを確認した.
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