研究概要 |
がんの末期に骨転移が起こると,患者の骨は極めて脆弱になり,寝返り動作による体幹の捻れによって激しい疼痛や骨折が発生する.本研究では生体計測技術とロボット技術の知見を活かし,ターミナル・ケアにおけるペインマネジメントを実現する「筋電信号を用いたがん骨転移患者の寝返り支援機器の開発」を行う.患者の寝返り動作を筋電信号の解析によって高応答かつ高精度に検知し,痛みを引き起こす体幹の捻りだけを抑制しつつ寝返り動作を空気圧ゴム人工筋を用いて人体との親和性の高い支援を実現するものである.この機器の開発により末期がん患者のQOL向上とADL獲得の実現を目指す. 本年度は,生体筋と特性が近く人体との親和性が高い空気駆動型ゴム人工筋を用いて,体幹回旋を抑制する機構の開発を行った.まず人体の体幹回旋動作の運動学的特徴を計測し,モデル化することで,最適な空気圧ゴム人工筋の配置方法,配置長の設計を行った. また,人体への安全性,親和性を十分に配慮したハードウエアの設計・製作を行い,提案機構の有効性を体幹回旋角度,体幹への負荷力,肩周辺部への圧力などを計測することで評価した. 最後に,昨年度までの寝返り動作の認識に関するソフトウエアと本年度開発したハードウエアのシステムインテグレーションを行い,トータルシステムとしての性能を評価した. 以上により,内腹斜筋の筋電信号を入力信号とした寝返り動作支援システムを開発し,高応答かつ高精度に寝返り動作を認識し,安全かつ適切に体幹の回旋を防ぐという要求性能を実現していることを確認した.
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