研究概要 |
高齢者の転倒予防と健康支援体制の確立が社会的に急務である.足部は重心保持・移動の作用点であり,扁平足やハイアーチなどの足部アーチ(内側縦アーチ)の異常は転倒リスクを高め,下肢の疼痛や障害を誘発すると考えられる.しかし,足部アーチの定量的な評価システムは存在しておらず,高齢者における足部アーチの実態データもほとんど存在しない.本研究では,足圧分布データを用いて,高齢者の転倒予防・運動支援に有効な定量評価システムを開発することを目的としている. 平成23年度においては,前年度までに行ったフィールド実験によって得られたデータを用いて、統計学的な手法を用いて、パラメータの再検討と判別式の設定を行った。パラメータの選択においては赤池情報量基準を用いたが、前年度行ったバイオメカニクス的な検討と一致して中足部圧力比が選ばれた。判別分析については、判別式を求めた設定群、別の健常高齢者の評価群ともに、十分な精度で判別できることが示された。一方、前年度に試みた四分位値による方法は、設定群での分類は精度よく判別できるが、別のグループに適用すると、感度・特異度ともに低下した。従って、判別分析による方法が良いと考えられた。 以上のことから、高齢者の足部アーチの評価システムの開発のうち、当初の計画の通り、パラメータの抽出と判別方法の確立を行うことができた。 今後は、以上の成果に基づいて評価基準を設定するほか,再現性や信頼性に関する検討や,運動やフットケア等の介入による効果について検討する.さらに、評価基準に基づいたシステム化を行い即時フィードバック可能なアプリケーションを作成する.
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