身体運動を行うことによって認知機能を改善するという知見はあるものの、未だ不明な点が多い。そこで本研究課題では、認知機能における身体運動の有効性について、運動習慣の有無によって相違があるかどうかについて検討し、さらに脳構造という観点からも検討を加え、身体運動による認知機能改善におけるメカニズムの一端を探ることを目的とした。本年度は昨年度に引き続き、健康な男子学生対象に、最大酸素摂取量と認知機能との間に関連性があるかどうかについて調べた。認知機能の計測として、Go/No-Go課題、ストループ課題、ATMT(Advance Trail Making Test)、単純計算課題を用いた。昨年度の被験者と合わせて、合計38名で検討を加えたところ、最大酸素摂取量とGo/No-Go課題、ストループ課題、ATMTのそれぞれ回答に対する反応時間と単純計算課題における正解数ならびに平均解答時間との間には有意な関係はみられなかった。先行研究では、長期間の運動介入により認知課題の成績向上が認められているが、それらの研究の多くは55歳以上を対象にしているため、20歳前後という若年者では差が認められなかったのかもしれない。今後は、若年者における運動習慣の有無と認知機能に関してさらなる検討を加えるのと同時に、ライフステージのどの段階において運動習慣の有無による認知機能の結果の相違がみられるのかに関して検討していくことが必要であると考えられる。 また、被験者の脳のMR画像を撮影しており、現在Voxel-based morphometry(VBM)法により画像解析を行っているところであるが、今後、運動習慣の有無によって脳構造に差があるかどうかについて検討を加えていく予定である。
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