研究概要 |
身体運動を行うことによって認知機能を改善するという知見はあるものの、未だ不明な点が多い。そこで本研究課題では、認知機能における身体運動の有効性について、有酸素能力の相違によって影響を及ぼすかどうかについて検討し、さらに脳構造という観点からも検討を加え、身体運動による認知機能改善におけるメカニズムの一端を探ることを目的とした。 本年度は、61~75歳の男性高齢者16名(68.3±4.1歳)を対象に、最大酸素摂取量と認知機能との間に関連性があるかどうかについて調べた。認知機能の計測として、Go/No-Go課題、ストループ課題、ATMT(Advance Trail Making Test)、単純計算課題を用いた。また被験者の脳MR画像を用いて、Voxel-based morphometry (VBM)法により画像解析を行い、脳の局所灰白質量と各認知課題、ならびに最大酸素摂取量との関係を検討した。 その結果、最大酸素摂取量とGo/No-Go課題、ストループ課題、ATMTのそれぞれの回答に対する反応時間と単純計算課題における正解数ならびに平均解答時間との間には有意な関係はみられなかった。また、年齢による最大酸素摂取量の個人差を統制するために、各年齢の平均値に対する偏差値を算出し最大酸素摂取量の偏差値との関係も検討したが、有意な関係はみられなかった。さらに、VBMを行った結果、ATMTの反応時間と脳の局所灰白質量との間に有意な関係がみられたが(P<0.05, FDR(false discovery rate))、最大酸素摂取量と脳の局所灰白質量との間には有意な関係はみられなかった。
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