研究課題
我々は繰り返しトレーニングを行うことによって新たな動作を学習することができる。トレーニングに伴って生じる脳神経回路の再構築は、我々ヒトが新たな運動スキルを柔軟に獲得するための神経基盤である。本研究では、一次運動野に焦点を当て、この領域の神経系再構築のメカニズムを明らかにしていく。脳の中でも一次運動野は運動に直接関係する部位であり、その部位の機能的変化は運動学習機序を明らかにするうえで重要である。これまでサルのニューロンを記録した先行研究から、運動中の一次運動野のニューロンは運動する方向に応じて発火パターンが変わり、発火しやすい方向(至適方向)が存在することが知られている。そしてその至適方向はトレーニングに伴って変化する事が明らかになっており、新たな運動スキルを獲得するための神経基盤であると考えられている。そこで新しい環境下で運動学習を行った時の神経活動の変化を調べた。その結果、学習に伴って皮質脊髄路の興奮性は筋の機能と運動方向に応じて、運動の準備段階から至適方向の変調が起きていること、その至適方向の変調は力場の学習に応じてシステマティックに変化することが明らかになった。さらに複数の環境を学習する場合は、学習した運動のコンテクストに応じて皮質脊髄路の活動も変調を受けることが明らかになった。短期的なトレーニングに伴う一次運動野を含む皮質脊髄路の活動の変化は、ヒトが新たな運動スキルを身に着けるための神経基盤を解明する一助となり、運動学習の基礎理論に貢献できるものであると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究成果によって、皮質脊髄路の興奮性は筋の機能と運動方向に応じて変調すること、運動の準備段階から変調が起きていること、力場の学習に応じてシステマティックに変化すること、複数の環境下では運動のコンテクストに応じて変調することといった点を明らかにしていることから順調に進展していると考えている。
これまでの研究では経頭蓋磁気刺激装置を用いることで一次運動野を含めた皮質脊髄路の興奮性の変化を明らかにしてきた。今後は、新たな動作を学習した時の神経基盤の再構築過程を皮質レベルで検討するために機能的磁気共鳴画像法を用いて研究を推進していく予定である。
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Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics
巻: Vol.15 ページ: 942-953
整形・災害外科
巻: 54巻 ページ: 357-364