研究概要 |
運動時において非活動肢の導管静脈血管は交感神経性に収縮することが示されているが,そのメカニズムは明らかではない.運動由来の交感神経活動亢進を引き起こすひとつに,末梢(活動筋)からの反射性制御(筋機械受容器反射および筋代謝受容器反射)が挙げられる.平成22年度においては,末梢からの反射性制御の一つである筋代謝受容器反射が導管静脈の血管調節に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.被験者は健康な成人男女12名とした.被験者は仰臥位姿勢にて20分以上安静を保った後,次のような2条件のプロトコールを実施した;1)1.5分間の45%MVC強度の静的掌握運動後,運動肢の上腕部を220mmHg以上で2分間虚血する条件(OCCL)と2)1.5分間の45%MVC強度の静的掌握運動後,虚血を伴わない回復期を有する条件(CONT).測定項目は心拍数,平均動脈血圧,尺側皮静脈の血管横断面積と血流速度とした,血管横断面積と血流速度は非活動肢の上腕部を50mmHgで加圧した状態で超音波法にて測定し,両者から血流量を算出した.心拍数はCONTおよびOCCLとも,運動中に増大し,運動後安静値まで戻った.平均動脈血圧はCONTおよびOCCLとも運動中に増大し,運動後はCONTでは安静値まで戻ったが,OCCLでは高値が維持された.尺側皮静脈の血管横断面積と血流量はCONTおよびOCCLとも運動中に低下し,運動後はCONTでは安静値まで戻ったが,OCCLでは低値が維持された。これらの結果から,運動に伴う非活動肢の表在性静脈血管収縮は筋代謝受容器反射を介した交感神経活動亢進により引き起こされる可能性が示唆された.
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