研究概要 |
本研究では,日本の伝統舞踊において「わざ」がどのように継承・習得され,また時間とともに「わざ」がどのように熟達するかを理論的,科学的,総合的に解明することを目的としている.具体的には,動作分析,視線分析,言語分析,行動分析を行い,指導者から学習者へと伝えられる「わざ」の継承,習得,熟達過程を多面的にアプローチする. 23年度は主に,22年度に収録した舞楽『陵王』のデータの分析を進め,舞人の「間」のとり方についての詳細な検討を行った.その結果,舞人が主観的に感じている「間」の長さと,客観的に測定しうる物理的な「間」の長さは必ずしも一致しないことが示された.とりわけ,舞楽における「間」は,振りと振りのつなぎ目の「間」をどのように保つか,といったことと大きく関係しており,振りに費やす時間が短ければ短いほど,舞人自身は「ゆったりと舞えた」と感じていることがわかった.つまり,振りと振りをつなぐ「間」の長さをどのように保つか,ということと舞人の「間」の感覚に強い関連があることが示された.研究成果は国内,国外の会議にて発表し,伝統芸能において暗黙裡に受け継がれてきた秘伝のわざを実証的な方法によりアプローチする試みとして一定の評価を得た.今年度はさらに,日本の伝統芸能従事者として,花柳乃三氏(日本舞踊),笹岡隆甫氏(生け花)を招聘し,それぞれの分野における「伝統とわざ」についての情報提供をいただいた. 24年度は最終年度であるため,これまでの研究の整理と統合を行い,本研究の最終目標であった「わざ継承の体系化」のための作業を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では,これまでに蓄積してきたあらゆるデータの統合を行い,「わざ」伝承の体系化を目指すべく,さまざまな分析手法を試みる予定である.特に学内に在籍している統計を専門とする研究者に知識提供を要請し,データの集約方法について検討を重ねたいと考えている.
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