本研究は,日本の伝統舞踊において「わざ」がどのように継承・習得され,また時間とともに「わざ」がどのように熟達するかを理論的,科学的,総合的に解明することを目的とするものであった.指導者から学習者へと伝えられる「わざ」の継承,習得,熟達過程について多面的なアプローチを試みた. モーションキャプチャ(身体動作),アイマークレコーダ(視線計測)を用いて舞踊におけるわざの物理的側面を計測を行った.また,初心者から熟練者まで,熟練度の異なる協力者を対象とし,熟達の過程の定量化を試みた.さらに,実際の稽古場面に立ち会い,稽古の風景をビデオ撮影し,映像コーディングにより行動分析を行った.これらをもとに,実際に稽古の現場で使用されているわざ言語(指導言語)と動きの関係を明らかにするとともに,指導者と学習者のインタラクティブな関係性についての定量化を試みた. 編成24年度は,特にこれまでに収録したモーションキャプチャデータの編集,分析,統合作業を行うとともに,日本舞踊に限らず,広く芸能におけるわざの継承,習得,熟達過程に関する検討や未熟練者,熟練者の比較を行った.また,観客の有無によって演者のパフォーマンスがどのように異なるかを調べるための実験を実施し,熟練者がいかにして「観客」を巻き込んで舞台空間を作り出しているかについて検討を行った. 研究成果は国内外の会議において発表を行った.
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