野外教育活動の一つである冒険教育プログラムは、5~8名の少人数グループで自然環境を利用したさまざまな課題に挑み人格形成を図ることをねらいとしている。本研究では集団が生み出す力や構造として"グループ効力感"に着目し、量的・質的アプローチからグループの形成過程と個々の体験プロセスの相互作用を明らかにすることを目的とし、以下の研究課題を定めた。 研究課題1:グループの効力感とその形成プロセスを明らかにする 研究課題2:参加者個々の自己効力感と体験プロセスを明らかにする 研究課題3:グループの形成と個々の体験の相互作用を明らかにする 平成22年度は研究課題1と2に則し、これまで仮説的に提示していた参加者の内的プロセス"不適応状態→課題解決体験→達成・成功体験→自己効力感"の検証を行い、参加者の自己効力感の向上に影響を及ぼす体験要因を明らかにすることを目的とした。 研究対象は2010年7月23-29日の「ジュニアアドベンチャー7日間」、2010年8月4-18日の「ジュニアアドベンチャー15日間」の参加者計25名(小3-中1)を分析対象(冒険群)とした。一方、比較対照として2010年8月2-5日のK町主催「サマーキャンプ」からランダム抽出した25名(小4-6)を分析対象(一般群)とした。 分析方法は自己効力感の変化は冒険群と一般群について2要因分散分析を行い、参加者の自己効力感の向上に影響を及ぼす体験要因は、不適応状態→課題解決体験→達成・成功体験→自己効力感のプロセスに基づき、階層的重回帰分析を行った。 その結果、課題解決体験は冒険群と一般群において、達成・成功体験に影響を及ぼしていることが明らかとなった。また、達成・成功体験は冒険群における自己効力感に影響を及ぼしていることが明らかとなった。冒険教育プログラムでの困難な課題、それを乗り越えるための豊富な課題解決体験、そこから生じる達成・成功体験は自己効力感に影響を及ぼす体験要因であることが明らかとなった。
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