研究概要 |
本研究は動的刺激に対する幼児の反応特性を明らかにすることを目的とした.そこで本年度の研究課題として,まず現代の幼児が有している運動技能を含めた運動能力水準を把握することを試みた.その結果,身体活動水準が運動能力に影響することが示された.次に,一定速度で移動する光刺激に対する幼児の反応特性を明らかにすることを目的とし,3-5歳までの幼児44名及び大学生17名の反応を比較検討した.実験装置に関しては,被験者の前方に刺激ボックスが7つ設置され,刺激ボックスから呈示される赤色の光刺激が一定速度で左から右に移動する仕組みになっていた.被験者が行った課題は,一定の速度で移動してくる光刺激に対して,あらかじめ設定された刺激呈示位置(本実験ではS_6)に光が呈示された際,手元の反応キーを押すことにより,標的刺激と自身の反応を一致させることであった.被験者が遂行する課題の刺激速度条件は300ms,200ms,100msの3条件であり,試行数は各速度条件につき20試行であった.幼児は大学生よりも反応の遅れが生じていたことから,3-5歳児では本研究で採用した速度条件の刺激を十分に追従できる発育発達段階ではなかったといえる.また,5歳児に着目すると,正確性においては,200ms条件が最も誤差が少なく,300ms条件で最も誤差が大きかった.変動性においては,速度条件が低速になるほど変動性が高くなる傾向を示した.大学生においては,正確かつ安定した反応を示した.これらのことから,大学生は刺激を追従するとともに適切に動作の制御を行っていたが,5歳児では刺激を視覚的に追従することができても動作を適切に制御することが困難であったと考えられる。以上の結果は,幼児の予測機能を明らかにするための基礎的資料とすることができる.具体的には光刺激の移動中に刺激の遮蔽を生じさせた場合の反応の検討のために必要な資料となる.
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