研究概要 |
平成22年度は,バントおよび打撃動作に熟練した選手および非熟練者を対象とした実験を行い,被験者の動作および動作感覚をデータとして採取し,その身体的スキルの違いを調査した.バント実験では,日本プロ野球機構で承認される公式球を使用し,バットは硬式用木製バットを使用し,被験者には投手から投じられたボールをバントするよう教示した.打球を転がす打球方向条件として1塁方向,投手方向,3塁方向の3条件を設定する.各打球方向条件において80試行ずつ計240試行を実施した.実験参加者は大学体育会硬式野球部選手5名であり,バットヘッドとバットグリップ部分に反射マーカーを付けて標点とした.高速度カメラ(本予算で購入予定)で撮影し,オフラインで解析し,バット角度,関節角度等を算出した.また,1試行ごとに質問用紙を用いて被験者の動作感覚を記録した(「満足度,成功度,ボールのコース・・・」など).その結果,打球方向の課題を達成するために,本研究の被験者はバットヘッドだけでなくグリップも移動させて適切なバット角度を形成させていた.また,投球の高さに対しては下肢関節運動を含めてバットヘッド,グリップを移動させて対応していた.インパクト時にみられた打球方向条件間でのバット角度の違いは,動作の開始期からみられた.本研究の結果から,実際の指導現場において指導されている内容と実際の動作との間に違いがみられ,平成23年度に実施する実験に対して研究課題を明確にすることができた.また,打撃動作については,客観的なパフォーマンスを簡便に指標化することを目的としてスピードガンを用いた打球速度計測実験を実施し,その測定法の信頼性と妥当性について確認を行った.この研究成果から,打撃動作における打球速度の主観的な調整機構について,平成23年度に実施予定である熟練した選手による客観的なパフォーマンスと主観的な動作調節との関係を検討する基盤を整えることができた.
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