研究概要 |
昨年度は,バントに熟練した選手および非熟練者を対象とした実験を行い,被験者の動作および動作感覚をデータとして採取し,その身体的スキルの違いを調査した.本年度は,打撃動作におけるスキルを解明するために,屋外における打撃動作の撮影を行い,打球方向コントロールにおける主観的情報と客観的情報のずれの定量化を試みた.しかしながら,現有装置を用いた実験では,高速度で移動するバットの三次元座標を数値化する点において三次元誤差が非常に大きくなってしまう問題点が発生した.この原因はカメラの台数不足とカメラの撮影周波数上のスペックにあることが判明し,打撃動作よりも動きが緩やかなゴロ捕球動作を用いて,同様の実験を実施することとした.そこで,ゴロ捕球実験として,安全に捕球できるようにプラスチック製のボールを用いて,ヒトが転がしたボールを捕球し,左前方へ送球する一連の動作を4台の高速度カメラを用いて撮影する実験を実施した.実験参加者は大学体育会軟式野球部選手4名であり,左右つま先に反射マーカーを付けて標点とした.また,質問用紙を用いて被験者の動作感覚を記録した.被験者には体育館にて,自分の左側に転がされたゴロを処理させた.その結果,4歩ステップ捕球の3歩目のステップでは,足の着地位置のばらつきが,構えおよび一歩目との間に有意に大きくみられた.そして,このばらつきの水平成分はその他のステップよりも大きく,特に一歩目と4歩目との間に有意な違いがみられた.また,ステップ長の変動係数においても,3歩目はその他のステップと比べて有意に大きい値を示した.4歩目のステップでは,足の着地位置のばらつきが,構えおよび一歩目との間に有意に大きい値であった.また,ばらつきの鉛直成分は水平成分よりも大きい値であった.ステップ角度の標準偏差においても,4歩目のステップはその他のステップよりも大きい値であった.以上より,3歩目のステップは主にステップ長を調節することでゴロの転がるコースに対して調節をする働きをもち,4歩目のステップはゴロを捕球する位置を前後で調節する働きを持つことが示唆された.
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