研究概要 |
現在,スポーツや医療現場などでスポーツテーピングを用いた膝の温存が頻繁に行われている。このテーピングによる膝関節への負担軽減,すなわち運動制限に関する効果は曖昧であり,十分な運動力学的検証が行われていない。 そこで初年度は,歩行時の膝動態解析が可能なインテリジェント膝解析装置を用いて前十字靱帯損傷時に適応するスポーツテーピングが,歩行中の膝関節動態パラメータ(膝の屈曲角度,大腿部に対する下腿部の前後移動と内外回旋)に及ぼす影響を明らかにした。両膝に損傷歴のない健常者15名(20~26歳,平均年齢22.3歳,男13名,女2名)を対象とし,テーピングを施術しない状態(control群)と施術した状態で歩行解析を実施した。テーピング施術実験では,施術直後,30分間,1時間の軽い運動を行った後(歩行運動)に歩行解析を実施した。 この結果,テーピングを施術することで,歩行時の膝の屈曲角度および大腿部に対する下腿部の前後移動量と内外回旋量が,control群に比べ抑制されていることが認められた。特にテーピング施術直後は顕著な抑制効果が得られたが,時間の経過とともに膝関節の抑制効果は徐々に減少することが認められた。しかしながら,約1時間の歩行運動を行った後でも,下腿部の前後移動量および内外回旋量は,controlの約80%を維持しており,歩行程度の軽い運動ではテーピング効果はある程度持続することが明らかとなった。これまでに,歩行時の膝関節に及ぼすスポーツテーピングの温存効果を定量的に評価した研究はない。歩行条件下での限られた範囲内ではあるが,運動中のテーピングの効果を定量的に評価できたことは大変意義のある結果である。
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